研究概要 |
光イオン解離するトリフェニルメタンのロイコ体を含むアクリルアミドゲルが紫外光照射により, 200〜300%光可逆変形することはすでに報告している. この光変形の機構を明らかにすることを目的として, 塩添加効果を検討した. 10^<-4>MのNaCl, KBrの添加により光変形は60%に減少し, また10^<-2>Mの添加により変形は見られなくなった. この結果は, 光変形がロイコ体の光イオン解離によりゲル内の浸透圧が増加したためであることを示している. この手法の普遍性を明らかにする目的で, 電子受容体の存在下光照射によりイオン解離する10-メチルフェノチアジンを含む高分子を合成し, その光応答挙動を検討した. 3-ビニルー10メチルフェノケアジンをラジカル重合し, 得られた高分子のジクロロエタンーCCl_4混合溶媒中での光粘性効果を測定した. この高分子がCCl_4との相互作用により光イオン解離することは, 吸収スペクトル, ESR測定により確認した. この素の粘性は, 予想に反して光照射により減少することが認められた. これは, イオンラジカル対同志の相互作用により分子内会合が起ったためと考えられる. ゲル系へ拡張し光応答挙動を検討した所, わずかであるが光膨潤が認められた. より大きな光変形の実現をめざして, 相転移を起こすポリCN-イソプロピルアクリルアミドノゲルへ光感応基を導入することを試みた. トリフェニルメタンロイコシアニドを導入すると, 相転移は消滅し温度上昇とともに, 単調に収縮することが認められた. しかし, 光照射によりゲル中へイオンを発生させると相転移が現われ, 31°Cにおいて著しく収縮することが認められた. 30°Cにおいては, 光照射により20倍以上光膨潤することが見出された. 以上の実験において, 光源として, He-Cdレーザーを用いた.
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