研究概要 |
イオン導電性薄膜は, 固体電池, 表示素子などへの応用が期待され, 活発に研究が進められている. 本研究では, 種々の薄膜化手段を用いて, 作製時の表面雰囲気の制御を行うことにより, 導電率が高く, しかも電極などとの界面での反応性が低い, 安定なイオン導電性及び混合導電性アモルファス薄膜を開発することが主な目的である. 得られた結果を以下に示す. 1.LiとSiのアルコキシド溶液に対し, ディップコーティング法を用いて, Li_2O-SiO_2系アモルファス薄膜を作製した. この際, コーティングを行う雰囲気が膜質に大きく影響を及ぼし, 相対湿度が低いほど, 均質で平滑な膜が得られた. 薄膜の導電率は, 熱処理温度が高く結晶化温度に近いほど大きくなる傾向がみられた. また, 結晶化温度よりもかなり低い温度における熱処理によっても, 導電率がいったん高くなる現象が観測された. この温度は, 有機物の燃焼温度よりも低いことから, ある程度有機物を含有した状態で, 導電に都合のよい構造が形成されるものと考えられる. 2.アモルファスMoOS_3, MoOS_2, WS_3およびWOS_2をそれぞれ(NH_4)_2MoS_4, (NH_4)_2MoO_2S_2, (NH_4)_2WS_4および(NH_4)_2WO_2S_2の熱分解により作製した. 熱分解はN_2, H_2Sなど種々の雰囲気中で行い, 生成物と熱処理条件との関係を明らかにした. また, これらの生成物を銀およびリチウム電池用のカソード材料として用い, 電気化学的手法により電池特性を検討した. その結果, 他の硫化物系に比べて非常に高い開放端電圧を示し, またいずれの場合も充放電が可能で, 二次電池としての応用が期待できることがわかった. 3.CuI-CuBr-Cu_2O-MoO_3系をはじめとする種々のCu^+イオン導電性ガラスを, 溶融雰囲気を制御することにより作製した. このようなガラスはAg^+系超イオン伝導ガラスに匹敵するほどの高い導電率を示すことがわかった.
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