研究概要 |
集合現象を認める高分子の組合わせとして, ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)-カルボキシビニルポリマー(CP)およびポリビニルピロリドン(PVP)-CPを選択し, 集合の機構, 集合に影響する因子, 集合体からの廃棄放出について検討した. HPC-CP系において, 混合液の濁度および粘度の測定, さらに個体集合体のFT-IRの測定により, 両高分子は構成モル比1:1で結合することが見い出され, その機構として水素結合が推定された. HPC-CP混合圧縮錠は粘膜に対し強い付着性を示すが, 付着はHPC-CP混合比により有意に変動し, 混合比1:1において最小値を示した. またHPC-CP混合圧縮錠からの色素の放出性を調べた結果放出速度は混合比1:1において最も低下することが認められた. 次にPVP-CP系における集合現象の機構についてHPC-CP系と同様に検討した. その結果, 集合体の形成は重量比1:1で起こり, その機構として水素結合か示唆された. またFT-IRの波形解析より求めた水素結合量は約45%であった. 集合現象は酸性条件下でのみ生じ, 結合強度は両高分子の分子量の増大とともに増大した. PVPとCPを種々の割合で混合し製したマトリックスからの薬物放出性について検討した結果, pH1.2におけるマレイン酸クロルフェニラミンの放出速度はPVPとCPの比が1:1の時, 最も低下した. 一方, pH6.8の溶出液へのインドメタシンの放出はマトリックス内の集合体の形成量に比例して, 放出に至までの時間が増大した. 以上の結果をもとに, HPC-CP集合体を放出制御膜とし, 大豆タンパクを核とする胃内滞留形薬物放出システムやPVP-CP集合体を利用し, 胃内通過後に徐々に主薬を放出するシステムの開発を進めている. またこの目的のために, 最適なシステムの設計に供するコンピュータプログラムをすでに開発した.
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