研究概要 |
研究の初年度に当たるため, 本年度の前半は, 1.文献および資料の洗いだしと発注, 2.「儒教文化圏」の文化的・社会的・経済的理解に重点を置いた活動を行った. 「儒教」に関する理解を深めるため, 湯浅泰雄氏(筑波大学)及び加地伸行氏(大阪大学)に研究会への参加をお願いし, それぞれの専門の立場から本研究へのアドバイスをいただき, 仏教・儒教の捉え方, 考え方について, 研究者間の理解の統一を行った. 後半は, 研究分担者及び協力者それぞれが, 研究計画をまとめ, 研究分野, 研究対象を明確にしたうえで, 研究計画及び研究成果の中間報告を行った. 長峰は, 土地改革やセマウル運動を通して韓国の農村に大きな影響を与えた. 儒教的な物の考え方の社会的な受け入れに関する研究を行った. 宮島は, 韓国と日本における土地所有制度の差異を家族制度とのかかわりに重点を置き研究することとし, 日本の地租改正と旧植民地における土地調査の比較研究を行った. 大橋は, 中国滞在中のヒアリングをもとに, 中国の企業における労働のインセンティブ, 労働の査定・報酬体系についての分析を行った. 原は, 集団形成原理や宗教について大きな差のある南アジアと東アジアの比較を行い, 儒教文化の経済的位置づけを試み, その経済発展のための方策に関する研究を進めた. 荒山は, 儒教文化圏における産業構造の変化と労働力移動の特徴を明らかにするための準備として, 利用可能な統計資料の整理を行った. それぞれの研究成果を持ち寄り, 検討した結果, 1.社会改革や経済発展の担い手となった人々の, 共同体, 社会におけるモラールおよび社会的階層性, 2.国内市場(資本と労働)の特徴に関する一層の検討が, 儒教文化圏の理解にとって重要であることが判明した.
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