研究概要 |
主として以下の諸点についての検討を試みた. ASEANとアジアNICSの関係:日本は円高と対米経済摩擦回避のためアジアNICS, ASEANへの企業進出を一般と活発化している. アジアNICSもまり対米経済摩擦を強めつつあり, そのため労働集約的部門の一部をASEAN(とくにタイとインドネシア)に再配置している. こうして, 日本一アジアNICS-ASEANという三層の国際分業体制の中で, ASEANは一次産品市場の低迷にもかかわらず, 外国投資ラッシュによる経済的好況を呈し始めている. (2)韓国における人口移動と就業構造:1970〜80年代にわたり年間40〜60万人の離農人口の大都市流入があった. 70年代末から80年代にかけての工業部門の雇用拡大のテンポをはるかに上まわる農村人口の都市への流入があった. 従ってソウルをはじめ大都市ではスラム地区が膨張し, インフォーマル・セクターの膨張がみられた. (3)ASEANの経済発展と都市過剰人口:タイは86年以降の投資ラッシュの中で, 輸出・投資主導型成長をとりつつある. 都市インフォーマル・セクターは一方で膨張しながらも, 他方では近代部門へ流入する労働力もある. フィリピンでは外資引上や累積債務のため緊縮政策がとられ, 一次産品価格の低落基調の中で, 都市インフォーマル・セクターの膨張が続いている. (4)農村過剰人口と地域労働市場:都市インフォーマル・セクターの外延部に農村部の過剰労働力人口がある. 彼らが大都市を中心とする地域労働市場の中にくみ込まれた場合は, 在村人口であっても都市インフォーマル・セクター同様に近代部門の相対的過剰人口として機能する. しかし東北タイ農民のように遠隔地農漁村の季節的出稼を行う場合は, この相対的過剰人口のさらに外延部に位置するといえる.
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