研究概要 |
本年度の研究では, これまで研究してきたアジア発展パラダイムの中核地域を構成している主要国・地域の分析と, 現在進行中の科学技術革命をアジアがどのように受入れようとしているかの分析に重点をおいた. 東アジアは, 確かにアジア成長ベルトの中軸的役割を果たしているが, アジア全体の発展にとっても大きな影響力をもっている地域である. そこでアジア全体の発展パラダイムの枠組みにおける位置づけを考えてみる必要がある. そのような問題意識から「発展回廊の理論」をアジアに適用して,アジア発展回廊の構築を戦略的に考えてみた(論文1). つまりアジア成長ベルトと中国, 南アジアを発展回廊で連結しようというアイデアである. これら地域の中で開発と平和の観点から連結が容易でないのが南アジア地域である. 南アジア地域で新たに形成された南アジア地域協力連合(SAARC)がどのように発展していくかはアジアの開発と平和に大きなかかわりをもっている(論文2, 3). 発展の将来シナリオを考えるさいに, 現在進行中の科学技術革命との関係を問うことが重要である. 科学技術革命の中でも, 特に情報革命をとり上げ, 南北問題の視点から分析してみた(論文4). この成果を, 次年度はアジア発展回廊構想に具体化してみたいと考えている. 次に発展パラダイムの中で行動主体の研究をも考えてみた. アジア発展回廊の中で日本多国籍企業の役割は非常に大きい. そこで日本多国籍企業のアジア地域戦略を分析してみた(論文5). さらに開発における行動主体の中で, これまで無視されがちだったのが「開発における女性の役割」(WID)である. わが国の開発理論の中でも未開拓に近い分野といってもよいと思われる. 実際にも, 日本の開発協力政策の中でWIDプロジェクトはほとんどなかったし, 大きな成果もあげていない(論文6).
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