研究概要 |
今年度は, 二重励起状態にあるHe原子の三重項状態のエネルギーレベル, 波動関数を, 起球座標を用い, 断熱近似により計算した. すでにある計算結果と比較し, その精度を確めた. 今後三重項二重励起状態の衝突ダイナミックスを調べる予定である. 我々のグループではHeの一重項二重励起状態については, 起球座標により, エネルギーレベル, 波動関数が計算しており, それを用いて, 衝突ダイナミックスの研究の第一歩として電子衝撃による励起断面積の計算を行なった. まず, S-S励起に引続いて, S-P, S-D励起の遷移一般化振動子強度を計算し, 衝突の際の傾向則を調べた. これによりS-P, S-D励起に対する励起断面積をBom近似で計算し, 上記の傾向則を理論的に導出した. これらの傾向則は, He二原励起状態をe-He^<++>-eなる線型三原子分子としてみるモデルにより, 物理的に簡単に解釈出来ることを見出した. すなわち, 原子はその"分子"に固定した座標でみると, 振動の状態に変化がなく, また平均の"分子"軸のまわりの回転の励起も起らない. 但し, ^1S-^1P状態間の遷移に対しては, 原子内電子に対するパウリの排他律によりそれが修正をされ, 振動が一単位と, 回転が一量子分だけ励起される. これらの解釈は, 電子衝撃によるHeの二電子励起状態の閾値励起の実験結果も同時に統一的に解釈する事を可能にする.
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