研究概要 |
不斉分子識別に基づく分子変換という研究課題のもとに, 本年度は目的の化合物を化学的手段あるいは酵素的手法により超効率下に合成することを念頭に研究を行った. 福本圭一郎は高選択的不斉増殖による生理活性化合物の合成研究という研究課題でマロン酸より光学活性の1,3-プロパンジオール誘導体を合成し, これを不斉標として不斉増殖を行い, 分子内および分子間nitrone1,3-dipelancyclialditionをkey反応として四つの連続するキラル中心を構築し〓β-メチルカルバペネム合成の重要中間体の超高率合成に成功した. 小田順一は酵素的手法による不斉合成を検討し, 有機溶媒中でリパーゼを触媒とする環状腹無水物の開環反応が高選択的に進行することを見出し, さらに対称分子から光学活性体への変換を実施し, C2キラル源を利用した完全な立体選択性を示す分子内ラクトン化反応の開発に成功した. 楠本正一は糖質の変換と糖鎖合成という研究課題で糖質の領域における効率的な分子変換法の開発を企画し, 免疫増強活性を始めとする興味ある生理活性を有する細菌細胞表層のリポ多糖ならびにペプチドグリカンを対象に研究を行い, 入手容易な糖を原料にして重要な糖成分を合成し, さらにグリコシド結合の立体配置を制御しつつ糖質を延長することに成功した. 畑田耕一は高性能高速液体クロマトグラフィー用光学活性充填剤の開発という課題のもとに研究を展開し, 先ずアミローストリフェニルカルバメートのフェユル基上にメチルあるいはクロロ基を導入した誘導体を5種類合成した. これをシリカゲルに吸着させてHPLC用の充填剤とし, 種々のラセミ体に対する光学分割能を評価し, 3,5-ジメチル誘導体と3,5-ジクロロ誘導体が高い分割能を示す実用性の高い充填剤であることを明らかにした.
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