研究概要 |
1.γ-位にトリメチルシリル基を有するアリルアルコール((E)-Me_3SiCH=CH(OH)-R, 1__〜)の不斉エポキシ化反応による速度論的光学分割を行なうと, その分割の効率は, 置換基Rによらず, 常に高率的であり, 生成するエポキシアルコールならびに回収するアリルアルコールともに光学純度99%ee以上であることを明らかにした. そしてこの反応で生成した光学活性化合物に, シリル基の反応特性を活用し, 立体選択的な炭素-炭素結合生成反応あるいは官能基変換をほどこし, 以下に示す有用化合物の合成を行った. (1)アリルアルコール1__〜のアルキル基RがCH_2OPh, (CH_2)_2OPhである化合物を用い. 糖合成に有用なキラルビルディングブロック, すなわち, α, β-ジアルコキシアルデヒド, α, γ-ジアルコキシアルデヒドが容易に合成できた. (2)アリルアルコール1__〜より容易に導かれるビニルハライドを利用して, アラキドン酸リポキシゲナーゼ代謝産物である5(S)-HETE(5(S)-Hydroxy-6, 8, 11, 14-eicosatetraenoic Acid), 12(S)-HETE(12(S)-Hycroxy-5, 8, 10, 14-eicosatetraeroic Aoid)の合成に成功した. 2.部分的構造がアリルアルコールとも見なせる2-フリルアルコールを上記の不斉エポキシ化反応の条件下で反応させると, この場合でも速度論的光学分割が効率良く進行し, 光学活性な2-フリルアルコール(>95%ee)ならびに酸化成績体が生成することを見い出した. さらに光学活性な2-フリルアルコールのフラン環を酸化すること, α-ヒドロキシカルボン酸誘導体が収率良く合成できることを明らかにした. この化合物は各種天然物合成のキラルビルディングブロックとして有用な化合物であるばかりでなく, それ自体天然物でもある.
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