研究概要 |
α-およびγ-位に2-ヒドロキシー(-ナフチル基や8-キノリル基をもつオクタエチルポルフィリンのRh(III)-Cl錯体はアセトンやシルチロヘキサノンのような単純ケトンのC-H結合の活性化に極めて有効であり, 温和な条件下でこれらと反応しカルボニル基のα-位メタル(ロジウム)化物を与える. この反応においてはケトンのカルボニル基がルイス酸部位であるRh(III)に配位し, 隣接するC-H結合のプロトンをポルフィリン置換基のフェノール性水酸基またはキノリル窒素がブレンステッド塩基として引き抜きケトンのエノール化が達成され最終的にRhと結合することにより有機金属化合物が生成する. このような(ルイス)酸-(ブレンステッド)塩基の協同触媒作用は酵素の活性中心のシミュレーションとして重要であるが, それが今回発現されたのはrigidなボルフィリン骨格を用いることにより酸, 塩基の両部位を近傍位に固定し, かつ両者の直接の相互作用にもとづく"中和"を抑制することができたからである. これに対し単純なRh(III)錯体とピリジンまたはキノリンを共存させて用いると両者の結合(配位)が起こり上述の活性は全く見られない. 一方, α-およびγ-位に2-ピリジル基をもつRh(III)-Cl錯体の場合には酸(Rh(III))と塩基(N)の距離は良いのだがNの電子対の向きが悪くRh-N配位結合にもとづく分子間の二量体中和をひきおこし失活してします. 8-キノリル系においてはRh(III)に対する配位軸とNの電子対の向きが直交しており分子内, 分子間いずれにおいてもRh(III)とNとの直接の相互作用(中和)が全く無くこれが異常なまでの活性の原因である. このような修飾金属ポルフィリンにおける多点相互作用はケトンのエノール化以外にも認められ, 例えばアミノ酸はRh(III)-NH_2配位結合とOH-CO_2Hの水素結合により二点固定される.
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