研究概要 |
半導体表面からのレーザー脱離粒子に対する角度分解飛行時間分布の測定装置を製作した. レーザー光及び試料表面は固定し, 測定器としての四重極質量分析計を超高真空チェンバー内にて回転させた. 今年度前半には装置の一応の完成をみたが途中, チェンバー内の高圧ケーブルより放電が生じ, 安定に放出粒子の測定が出来なくなった. 3KV程度の高電圧ケーブルを動かすとひずみ部分より劣化が生じ, その部位より放電が発生することが判明した. 高圧ケーブルを耐圧の高い市販のものに変換しこの困難を避けることにした. そのうち超高真空用メタルオーリングが破損し, 超高真空の維持が困難となった為, ゴムオーリングにて10^<-8>Torr台の真空度でGa(111)表面からのレーザー脱離粒子の角度分解TOFスペクトルを得ることにした. GaP(111)表面から脱離するP_2分子に着目し, その収量Y(θ), エネルギーE(θ), 及び速度比S(θ)をレーザーパワーをパラメータとして測定した. その結果次の様な定性的結果を得た. (θは極角である. ) 1.Y(θ)はcosθ分布から大きく外れ, Y(θ)【similar or equal】cos^nθ(n]SY.gtorsim.[1.0)の型である. nはレーザー強度と共に増大する. 2.E(θ)はθ=0°方向にピークを持ち, θの増加と共に減少する. この減少傾向は, レーザーパワーの増加と共に顕著となる. 3.S(θ)は, θ=0°方向では1に近く, θの増加と共に1よりも大きくなる. この傾向は, レーザーパワーと共に顕著となる. 以上の3つの結果は, 脱離粒子の動的挙動が脱離の直後表面近傍に於いて粒子間の多重衝突の効果を反映して決定されることを示している. レーザー強度が増大すると, 放出粒子の数が増加し, その分, 粒子間衝突が激しくなる. 衝突により横方向の速度は殺され, 垂直方向の速度に変換される. これらの挙動に関し, 現在計算中である.
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