研究概要 |
RFスパッタリング法を用いて, Pd-P薄膜を調製し, その構造や反応性に対する熱処理や調製時の基板温度の影響を調べた. また, VIII族最右列の元素であるNi, Pd, Ptのホウ化物合金の特性比較を行った. Pd-P薄膜は, P濃度25%でアモルファス状態となった. この薄膜を用いてジオレフィン(1, 3-ブタジエン, シクロペンタジエン)やアセチレンの水素化反応を行うと, 高い部分水素化選択性(95%以上)を示した. Pd_<75>P_<25>薄膜に熱処理(真空中300°C, 1時間)を施すと, 選択性はさらに向上した(99%以上). 薄膜の表面組成は熱処理によってほとんど変わらないが, 構造をX線回折により調べると数本の新しいピークが出現し, アモルファス状態から結晶化していることがわかった. これらのピークはPd_<4, 8>PとPd_5P_2の混合相によるものと帰属され, この新しい結晶相が高い部分水素化選択性を示すことがわかった. そこでこの結晶相を調製時から作成するため, 基板温度300°CでPd_<75>P_<25>薄膜を調製すると, 先と同じXRDピークが大きく出現し, 結晶性のよい薄膜が得られた. この薄膜もまた高い部分水素化選択性を示し, Pd4, 8PとPd_5P_2の混合結晶相が高い選択性を示すことが確認された. Ni, Pd, Ptはこの順にd電子密度が高くなっており, そのホウ化物合金においてBは電子供与性を示すため, 金属のd電子密度によりホウ化物合金における相互作用の強さやBの状態が決定された. Niはd電子密度が低く, Bからの電子を受け入れやすくNiとBの相互作用は強いが, Pdではd電子密度がNiより少し高くPdとBの相互作用は弱い. Ptは最外殻dバンドがほぼ完全に満たされておりBからの電子を受け入れることができず, PtとBの相互作用はないことがわかった. 相互作用の強弱は, 1, 3-ブタジエンの水素化反応における選択性の変化に明らかに現れた.
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