研究概要 |
フィリピン海における深層西岸境界流の測流を目的とした測流係留系(以下 係留系)の回収と設置を行い, 一部得れた資料の解析を行った, 研究航海は鹿児島大学水産学部練習船敬天丸により昭和62年10月29火から11月11日の間に実施した. 係留系の回収と設置を行った地点は次のとおりである. 1)バシー海峡, 琉球海溝最南端の東側斜面, 水深3,200〜4,800mの地点, ここでは本重点領域研究に先き立って昭和62年2月, 東大海洋研白鳳丸により係留系3系が設置された. 先ずこれらの係留系を回収し, 引き続いて新たに3系を設置した. 2)沖縄本島南, 琉球海溝南向き斜面, 水深3,650〜4,650mの地点に3系設置した. 3)都井岬南東方, 九州パラオ海領北端, 水深4,400mの地点に2系設置した. 回収と設置を行った係留系にはいずれも海底より400mと1400mの2層の流れを測定できるように流速計が装着してある. バシー海峡で回収された係留系の資料取得期間は190〜245日であった, この資料より深層西岸境界流の検出という点に絞り時間スケールの長い現象についてみる中, 深層, 特に3,000m以深に設置された測流点では海底地形の等深線に沿う方向(北北西-南南東)の流れが卓越すると同時に, 流速変動成分の長軸もほぼ南南東を指し, 流れが海底地形の影響を受けていることがうかがえる. しかし, 流れはあまり安定していない, 従って, ここでの流れが深層循環に付随する境界流であるかどうかの判定は, 現在測定中の琉球海溝南向き斜面等での資料が得れた後検討が必要である. また, 竹末正樹は深層流の基本適性質に対する十分な理解を得るため室内実験を行った, その結果, 南北両極において沈降した水は, β-効果がなくとも海領に沿う西岸低層境界流となって赤道へ向う等のことを示した.
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