研究概要 |
従来型の衝突装置を用いて, 金属物質の低温における衝突破壊の様相の解析, コア・マントル構造をもつ物質の破壊過程の研究が実施された. 金属鉄がT≦170Kで晩性転移をする破壊減少に大きな影響をもたらすこと, コアによる衝撃波の反射屈折がマントル物質の破壊過程におおきな効果をもたらすが, 適当なすスケーリングパラメターを使えばこのような複合物質でも均質物体の衝突破壊減少と同じように取り扱えそうである事がわかってきた. 従来の衝突装置で不可能であった衝突実験範囲の実験を可能にするために名古屋大学の低速度衝突銃の改造と京都大学の高速度衝突銃の製作が開始され, 二年次計画の初年度分が計画通り終了した. 前者では2mの銃身から, 低温のプロジェクタイルを発射できるようになった. 後者では現在静電加速型の加速装置が製作されつつある. 現時点では0.1ミクロン程度の炭素粒子を2km1秒まで加速できる. 最終的には10km1秒までの加速を可能とするものである. 惑星形成過程の数値シミュレーションとして従来考えられていなかった衝突破壊を取り入れた計算が実行された. ガスのない原始太陽系で地球が形成されるのに, 衝突破壊を考えると108年かかる事が明らかになった. これは従来考えられていたタイムスケールより1桁長い. さらに詳しい計算が望ましいと思われる. エイコンドライトの鉱物学的研究にも大きな進展が見られた. 特にダイヤモンド含む隕石として興味の引かれているユレーライトの鉱物学的研究からこの隕石の起源に関する制約条件がかなりはっきりしてきた. また宇宙雪氷学的研究として取りあげられている宇宙条件下の氷, 凍土の物理的性質の実験的研究の準備がすすめられた. これらは来年度以降に実施される予定である.
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