研究概要 |
エンスタタイト(以下Eと略記)コンドライトにおいては, 岩石学的タイプ3-5に対応するEHグループと岩石学的タイプ4に対応するELグループの間に化学的にも鉱物学的にも大きな違いが存在する. このうちEHグループ間では, EH-3とEH4-5の間にも明らかな鉱物学的差異が見い出されているが, 化学的には僅かな差しか認められていない. 本研究では元素存在度を通して, Eコンドラクト母天体上で起こったであろう変成過程を明らかにすることを目的として, 7つのEコンドライト, Qingzhen(EH3), Yamato691(EH3), Alee(EH4), Indarch(EH4), St.manki(EH5)Atlanta(EH6), Blithireld(EL6)について微量元素分析を行った. 分析した元素は親鉄親銅元素, 計11元素き親石としての希土類元素, IO元素αの合計21元素で, すべて化学分離操作を伴なう中性子放射化分析法により定量した. 親鉄元素の存在度に関しては, EH3とEH4-5の間に差は認められなかった. ただしIndanchではこれらの元素が一様に約1.5倍濃縮しており, これら元素が共通の鉱物相に存在することを示唆する. これに対して中程度の揮発性を持つ親銅元素であるSeとTeにおいて, EH3に比べEH4-5で, 1.4倍(Se)から1.8倍(Te)の濃縮が見い出された. しかしSeやTeと共通の鉱物に存在すると推定されている元素Ag, Tlでは, この様な傾向は認められなかった. このことから, SeやTeのEH3における減少は落下後の変成によるのでなく, いん石本来の, 恐らく母天体上での分別作用の結果もたらされたものであろうと考えられる. 揮発性元素のなかでは, CdとTlが2個のEH4コンドライトに比べてY-691(EH3)で濃縮しているのが見い出された. 母天体上での変成によりこれら元素が損失したものと考えられるが, 異なる事象によるものであろう.
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