研究概要 |
蒸発・凝縮に関する実験を, 合衆国カーネギー研究所の装置を用いておこなった. 当装置は出発物質だけでなく蒸発したガスも加熱させるため, ガスが急冷されてしまった従来の多くの凝縮実験装置とは異っている. 出発物質として2種のかんらん石を用いた. それはかんらん石がコンドライト隕石や地球の上部マントルを構成する最も主要な鉱物であり, 凝縮・蒸発などの過程でMgとFeがどのように分配されるかはきわめて重要な問題であるためである. 実験は水素ガスを流し全圧を10^<-6>torrに保ち, 1600〜1450°Cの加熱湿度で6〜60時間おこなった. 凝縮はサンプル保持に用いているMo線上におこなわせ, Mo線の温度分布は予め測定しておいた. 実験の結果, 出発物質よりMgに富むかんらん石が残り, よりFeに富むかんらん石組成のガスが生じたことがわかった. その組成は湿度の関数であり出発物質の組成にはよらない. ガスは冷却に伴い, Mgかんらん石, Feを少量含む輝石とSiO_2鉱物, Feに富むかんらん石, 金属鉄を順次析出した. この順番は各々の固相の蒸気圧の高くなる順に対応しており, 平衡に近い条件下で凝縮がおこったことがわかる. 凝縮は約1200°Cから500°Cの間で連続的におこり, 1200°C付近は数10l〓以上の粗粒なかんらん石のみから成っている. このような粗粒かんらん石が実験的に凝縮したのは初めてのことと思われる. 低温になるに従い凝縮物の大きさは小さくなる. 800〜500°Cの凝縮物はきわめて均一な組成でかつかんらん石に近いものでLガスの急冷生成物, すなわち出発物質が蒸発したとき共存していたガスの組成そのものであると考えられる. 残渣の組成とこの急冷物の組成から, かんらん石固溶体系のガス一固相の相図が作製できる可能性が示された. 残渣と急冷物の組成はコンドリュールとマトリックスの組成にラフには近似させることができ, コンドライトの形成を一つのプロセスで説明することが可能となった.
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