研究概要 |
現在の太陽系の角運動量分布を説明する有力なメカニズムは, 原始太陽系星雲中の乱流による角運動量輸送である. 星雲に集積する星間ガスは角運動量を失い, 太陽へ落込み, その成長に寄与する. 本研究では乱流星雲中に存在する固体微粒子の衝突付着成長過程を調べた. 初期には, 微粒子は, 0.1-1μの範囲に星間微粒子と同じサイズ分布をしていたと考えされる. 微粒子はガス抵抗により乱流ガスと強く相互作用をしているので, 乱流のない場合に比べて衝突速度は大きくなり, 従って微粒子の成長は乱流によって加速される. 例えば, 平均半径が1μから1cmまで成長するのに, 木星・土星領域では500年しかかかからないことがわかった. これは従来の推定より20倍早い. またより遠方の海王星領域でも2200年程しか要しない. サイズ分布は広い範囲にわたってべき乗則n(r)〜r^<-1.93>(rは微粒子半径)を示す. この分布は乱流中の衝突に特徴的なものと考えられる. 乱流拡散はサイズ分布を長時間にわたって変化させ, 微粒子は星雲内をかなり移動することが見つけられた. このことは隕石の化学的研究にとって大切であろう. 星雲に降り積もる星間ガスは星間微粒子を供給する. その効果は, まず0.1-1μの微粒子のreservoirの形成として約1600年以降に現れる. reservoir中の微粒子の存在量が十分大きくなると, 再び一群の微粒子が成長を始める. 言わば新世代の微粒子が数回形成されにうちに, サイズ分布は次第に定常状態に落ち着いてくる. 非常に大雑把に, 定常分布はn(r)〜r^<-4>と書ける. サイズ分布の時間変化は, 微粒子による光吸収係数の計算にとって本質的に重要である. 詳しい計算によれば, 微粒子の成長や新世代の微粒子の形成などのため, 吸収係数はかなり複雑に時間と共に変化することが見つけられた. それに伴う星雲の構造の進化や, 乱流星雲中での微惑星の形成など今後に残された問題であろ.
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