研究概要 |
多電子移動過程, とくに生体高分子及びそのモデル化合物における多電子移動過程の基本的性質の解明と触媒効果の発現機構の解析と目的として研究を行った. 千田は, 多電子移動酵素機能電極設計の基礎となるメディエータを用いる界面電子移動反応について, グルコースオキシダーゼを例として取りあげ, そのバイオエレクトロカタリシス電流を表現する式を導き, この式を特色ずけるパラメーターを明確にし, 15種のメディエータについてその電子移動物性と触媒活性との関係を明らかにした. これらの結果は酵素電極一般についての今後の設計原理の一端を明らかにするものである. またNADデヒドロゲナーゼの設計を試み, さらにジアホラーゼを同時に固定化することによりさらに実用性のあるセンサー用電極が出来ることを, アルコール, 乳酸, グリセロールデヒドロゲナーゼについて示した. 酵素-電極間直接電子移動について予備的測定を行った. 仁木は, チトクロムCと電極間の電子移動について, 全電極表面を4PyS吸着分子層で修飾した場合, 電子移動が吸着分子層を通しておこることを始めて実証した. また4BiPy吸着の場合はチトクロムCとの混合吸着のおこることを示した. 中村は, フェレドキシンとくに〔4F2-4Se〕クラスタを2, 4, 6-トリメチルベンゼン1, 3ジチオラート, また1.4ジチオラート配位子を用いてつなぎ合せたクラスタ集合体(15〜20FeySey2+クラスター1分子)を合成し, この高分子ドメイン中のクラスター構造と多電子移動反応の特性を, 集合体中のH+イオンをNu(II)及びCu(II)イオンと置換した集合体を用いるなどして明らかにし, 今後の触媒効果の見積を行った. 村上は, ビタミンB12モデルとしてのCo錯体について, 同様, 電子移動特性をしらべ, 電子移動と1.2転位反応触媒効果との関係を明らかにした. 関は, 共役系高分子(ポリチオフェン)素材の電子構造の測定を行い, これら新素材の基礎データを明らかにした.
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