研究概要 |
高エネルギー研放射光施設のX線スペクトル測定装置を利用して, ヘム鉄を活性中心に持つ金属酵素, 西洋ワサビペルオキシダーゼの不安定反応中間体(ヘム鉄高酸化状態), 並びに酸素担体ミオグロビンの各種誘導体にEXAFS/XANES法を適用し局所構造解析を行なった. 得られた研究結果を, 具体的に箇条書にして以下に示す. 1.ペルオキシダーゼの不安定中間体(複合体IIおよびIII)を捕獲するため, 物理的方法として急速混合凍結法を, 化学的方法として異種へム置換法を採用した. 前者では不安定中間体の純度を80%以上にする事は不可能であったが, 後者により95%以上の純度とする事ができた. なお用いた異種ヘムはジアセチルドイテロ型であった. 2.ペルオキシダーゼ複合体II(Fe^<++>=O), 複合体III(Fe^<2+>O_2)および比較試料としてベンゾヒドロキサム酸(BHA)複合体のX線吸収スペクトルを精密に測定した. 特にXANES領域に観測される小さな1s→3d禁制遷移ピークは, BHA複合体→複合体III→複合体IIの順に増大し, ヘム鉄が感じる配位子場の対称性の低下と相関していた. 3.上記3つのペルオキシダーゼ複合体に, CO型, CN型および還元型を加え, ヘム鉄有効価数のindicatorとされる^rK_-吸収端の位置」を比較した. 複合体II, IIともに酸化型低スピンの位置に近い事から, (1)従来ヘム鉄型式価数が4価とされていた複合体IIは3価である事, (2)複合体IIIは予測通りFe^<3+>O^-_2に近い事が結論できた. 4.高分子-金属置換クロロフィル系の設計・創出を目指して, 錯体部ペンダント分子になり得る各種金属置換クロロフィル類を調製し, 高速液クロによる分離・精製・定量法を確立し, 鉄クロロフィルについてはメスバウァ分光法により構造と電子状態を調べた.
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