研究概要 |
t-ブチルヒドロペルオキシド(t-BuOOH)はSharpless試薬の一成分であり酸化試材として多く用いられている. ヒドロペルオキシド類の有効な応用法を見い出すためモリブデン化合物の利用を考え, Br_4MoO^-種が効果的なことを見つけた. 本研究ではこの活性種を高分子化合物に担持させ高分子化合物とすることをこころみた. すなわち, 高分子化合物としてアミノとの反応によりクロロメチル化ポリスチレンにアンモニウム塩を付加したもの〔I〕, ポリビニルピリジン〔II〕, また無機高分子化合物としてシリカにアミノ基を持たせたもの〔III〕を利用した. 〔I 〕, 〔II〕, 〔III〕いずれもアンモニウム塩, ピリジニウム塩とし, 対アニオンとしてBr_4MnO^-を担持させ, t-BuOOHによるアルコール酸化反応の触媒として利用した. 〔I〕の場合三級アミノを用いると, 水酸基のみを酸化し, 二重結合のオキシラン環への転換はみられず基質選択性を示した. 〔II〕の場合は, ピリジニウム塩の対アニオンとしてBr^-が混入し, t-BuOOHの自己分解が生じアルコールの酸化選択性が低下した. 〔III〕の場合はシリカにジメチルオクタデシル〔3+(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロリド(シランカップリング剤)を反応させて-N^+R_2基の導入を行ない, アニオン交換反応によりBr_4MoO^-を導入することができた. 定量的に交換反応が進行しcl^-は残存せずt-BuOOHとの反応効率は良好であった. また, イソボルネオール, ボルネオール, およびメントール類の酸化反応を行なった. 〔III〕から得られたものは, その反応性が低分子化合物のピリジニウムテトラブロモオキソモリブデートと同であり, 活性基が孤立した位置にあり単独で反応に寄与するものと考えられ, 隣接活性基の影響はないものと考えられる. 一方〔II〕の場合は近傍基および主鎖の影響が大きく, 立体的な要因が反応に反映した. t-BuOOHを用いる酸化反応の効果については〔III〕を担体とする触媒が最も大きいことがわかった.
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