研究概要 |
本研究は, 最近の数値流体力学研究の著しいトレンドである複雑形状流路, 物体まわりの流れを, 電子計算機の大規模利用によって解析しようとする研究の一環を為すものであり, 乱流をできるだけ少ない仮定のもとに数値的に求める技術を確立することを目的としている. 本研究ではこのために, (1)単純流路によるLES解析技術の基本的問題の解明, (2)複雑な形状の流れ場における実用的なLES技術の精度向上, (3)スカラの乱流拡散におけるLES技術の適用と精度向上, (4)LES技術における数値計算スキームの誤差原因とその評価の確立をサブ・テーマとして研究している. 本年度内に得られた主なる成果は以下の通りである. LES解析技術における基本的問題は小規模渦の取り扱いであるが, これに関してその誤差の原因とその影響を調べるための数値実験を行ない, 独自の取り扱い法を提案した. また三次元的非等間隔格子を用いる場合について誤差の低減法を調べた. 複雑な流れ場のLESの問題については, 都市空間を模擬した巨大空間を対象に解析を進め, 乱れ強さ, 乱れの長さスケール等の統計量について, より実用的なレイノルズ平均式に対する独自の乱流モデルを得た. さらに乱流拡散問題では, Smagorinskyモデルに基づく渦拡散係数中の定数として最適値を得た. また初期速度, 初期温度などの非一様性, 非等方性および速度と温度などの相関が変動強度の減衰に与える影響の一部を明らかにした. 数値スキームの誤差原因については, 非保存形, 保存形, 回転形の3つの形のナビエ・ストークス方程式は, その形と差と保存性の差から異なった計算結果を与えることを示し, この誤差の寄与を無視できないことを明らかにした. また4階微分項の誤差は粘性流シミュレーションに大きな影響を与えることを示した.
|