研究概要 |
2次元非粘性流の場合には, 渦度は質量座標に固着し, ラグランジュ的に流れ場を記述すると, その質量座標を渦度の発展方程式から決定することが出来ること, すなわち離散渦法がオイラー方程式の解に収束することが証明された. 物体に過ぎる流れについては, その物体面からの渦度の発生について適切な数学モデルを考えることが出来れば, 発生した渦度を離散渦法によってたどることにより, 流れを解くことが出来ることがわかった. 角柱などの角のある物体については, 角からの渦の発生機構に適切なモデル化を行って, 離散渦法を適用して良い結果を得た. 滑らかな物体を過ぎる流れについては境界層剥離のモデル化が必要になり, 特に非定常な流れの場合には未だ普遍的なモデルが確立していない. 2次元粘性流については, 渦管を定義するとその渦管の循環が保存されるから, 粘性効果による渦度の拡散を粘性項を含むナビエ・ストークス方程式を渦度について解くことにより, 渦度の場従って質量座標を定めることが出来る. 但し乱流混合を含む場合には, その本質である3次元性を考慮にいれなければならないので, 2次元流の前提が成立する余地は少ない. 3次元の場合には, 非粘性の場合でも渦度は質量座標に固着せず, 渦管はその渦管の強さに対応して太さを変える. また, 曲率を持つ渦糸については, その自己誘導速度に特異性が現れるのを避けるために, 有限の大きさの渦核を考え,その積分核展開を利用して, 発散を避ける方法, いわゆる高次離散渦法が提案されている. これを利用して2つの渦輪の干渉について計算が行われ, 興味ある結果が得られた. 但し, 渦糸のつなぎかえなどのように粘性が本質的効果を持つ場合には, 渦管の概念そのものがもはや適用出来ないので, ナビエ・ストークス方程式を直接差分法で解くことを試み, 各種の場合について成功をおさめた.
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