研究概要 |
最近関心の高まってきた電子機器の冷却問題あるいはエネルギープラント内の管内流動などでは, しばしば非一様な熱的境界条件の下で発生する三次元拡散問題がその解析の対象となる. このような場合には, 従来の解析方法では極めて精度が悪く, 工学上の緊急性から新しい解析方法の開発が望まれている. ところが, 三次元の拡散問題は二次元の場合とは異なり, 壁面近傍で乱流拡散係数が非等方で乱流プラントル数も一定でなく, 又信頼し得る実験データも存在しない状況であるため, 有効な数値解析方法は今のところ確立されていない. そこで本研究では三次元スカラー拡散問題に関する基礎的データを得るために, 二次元チャンネル内乱流中に存在する不連続な熱源からの三次元拡散の実験を行った. この結果に基づいて, 壁面近くの非等方的な挙動を示すスパン方向の乱流拡散係数に対してモデルを行なった. モデル化を行なう際には, 壁垂直方向の乱流拡散係数に対するスパン方向の乱流拡散係数の比を考えることにより, 物理的意味のあるモデル式を開発した. 次に, 乱れの散逸率を表現する長さスケールとして, 壁から十分に離れた高レイノルズ数域と壁近傍の低レイノルズ数域で成立するものを各々理論的に考え, これらを乱流混合に与かる乱れの長さスケールと関係づけられる方法によって新たなk-ε乱流モデルを提案した. この乱流モデルにより, 既存のk-εモデルにおいて基本的な問題点として残されていた壁面近傍での乱流諸量の特性, 及び内部流れの管路中心部での渦粘性係数の挙動を正確に予測できることを確認した. これらのモデルを周方向に非一様な加熱を伴う円管内乱流の三次元拡散に対して適用することにより, 有効な数値予測ができることを確認した. 以上の研究結果により, 従来よりも精度の高い壁面剪断乱流の熱伝達の予測が可能となり, 又三次元スカラー拡散問題に対して有効な数値予測方法の手がかりを得た.
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