研究概要 |
1.B型肝炎ウィルス(HBV)の増殖できる培養系の確立と, そこに起こるウィルス成分産生の追跡. 株化された肝癌細胞にHBVのDNAを3個タンデムにつないだものをリン酸カルシウム法でとり込ませ, その中からHBVを産生すまもののあることを発見し確立株にした. この株を用いてRNA, DNA, タンパク質の合成を詳細に検討し, その動態と調節機構を解明した. また, この株化細胞がウィルスを放出しながら安定に分裂増殖を続けるという持性問応用してウィルス成分の産生を選択的に阻害する〓剤の検索を進め, OXetanosinを始めとする核酸物質前〓のアナログでありながら, 求める条件を満たすと思われるものを発見した. 2.HBV, DNAの組込みに関する研究. ウィルスDNAの組込みを持った宿主染色体DNA19種を分析して, これらが4つの型に分類できることを見出した. その結果を, 文献に報ぜられているのも含めてまとめると, 単純型6例, 欠失型15例, 再編成型8例であった. これから, HBVウィルスの組込みは, 染色体の中に異常DNAを挿入するに留ららず, 大きく染色体構造の再編成を促すことが明らかになった. 肝癌発生に至る過程は, この組込みと一義的には関連していないもようだが, このような染色体の変更を介して間接的に働いているのではないかという仮説を提出するに至った. 3.肝癌にみられる活性癌遺伝子lca. 3T3細胞をトランスフォームする活性により, 既に得られているlcaの特性を検討した. 本遺伝子は, 一部の肝癌および胎児肝臓において発現している. 24例肝癌のうち, 4例はlcaの活性化によるものであった. 正常型に比し, 活性型のlcaは51部位に小さな異変を起こしていることを確認した.
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