研究概要 |
種々のヒトがん細胞に対するモノクローナル抗体を作成し, がん診断, 治療への応用を計ることを目的として研究を行い以下の成果を得た. 1)ヒト及びラット膀胱がん細胞を抗原として作成したモノクローナル抗体のうち3つの抗体を選んでサンドイッチ法によりがん患者の尿診断を行なった結果, 健常人, 血尿では各々1例を除き全例が陰性であったが, 膀胱がん患者での陽性例は90例中60例(67%)と高く, また, 胃がん, 大腸がん, 膵臓がんでも陽性率が高く, この方法により, これらのがんの尿診断が可能なことが示された. 2)ヒト膀胱がん組織の連続切片を作成し, 膀胱がんに選択性をもつ種々のモノクローナル抗体を用いて対応抗原の分布を検索した結果, がん組織における抗原分布の不均一性が認められた. この結果はモノクローナル抗体の治療への応用を計るに当って重要な知見である. 3)がん細胞に広く発現している増殖関連抗原gp125抗原に対するモノクローナル抗体としてヒト並びにラット系のものは昨年度までの研究で作成されたが, 本年度の研究で, より基礎実験に有用なマウス系のモノクローナル抗体が作成された. 4)抗がん剤含有一抗体修飾リポソームのがん治療への応用について研究をすすめてきたが, 本年度はヒト膀胱がんの治療への応用を目指して反応性の高いモノクローナル抗体を選別し, またリポソーム内への含有量を増大でき, その抗がん効果も高いアドリアマイシンを含有させた抗体修飾リポソームを作成した. このリポソームは試験管内での反応で, 膀胱がん細胞に選択的に結合し, 細胞障害活性を示した.
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