研究概要 |
家族性大腸腺腫症(FPC)におけるポリープ発生に関連した遺伝子を同定するため, ポリープと正常大腸粘膜において発現量に差のあるcDNA7ローンの単離を試みた. はじめに, 正常大腸粘膜及びFPC患者のポリープよりcDNAライブラリーを作製した. 正常及びポリープからのプローブを用い分別的ハイブリダイゼーション法により, ポリープまたは正常粘膜で発現の高いcDNAクローンを検索した. その結果, ポープの方で, より発現の高いcDNAクローンを2株得た. 正常細胞の方で, より発現の高いクローンはまだ得られていない. また, FPC発症よ関連した癌遺伝子を検出するため, DNAをNIH3T3細胞に導入したあとヌードマウスに移植して腫瘍を形成するか否かを検討した. FPC患者のポリープ6例, 大腸癌1例, 抹消血リンパ球2例について調べたところ, 全例でAlu配列陽性の腫瘍が形成された. この中で癌遺伝子の存在が確かな2例につき詳しく解析した. rasを含む10種類の癌遺伝子を各々プローブとしたハイブリダイゼーションにより, 1例のポリープ由来癌遺伝子はN-rasであることがわかった. もう1例は抹消血リンパ球由来で, 調べた癌遺伝子のどれとも反応せず, まだ調べていない既知の癌遺伝子か, 新しい遺伝子と考えられる. 現在, EMBL3ファージを用いてこの遺伝子のクローニングをおこなっている. 最近, FPCの原因遺伝子が染色体の5番にあるらしいことが欧米で報告された. 日本人のFPCでも同じ部位に異常があるか否かを調べるため, 同じプローブを用いて検討した. 11家系54名について調べたが, ヘテロになったのは1家系3名のみで, 他はホモのため充分な解析ができなかった. 結論を出すには更に多くのプローブ及び家系を集めて検討する必要がある.
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