研究概要 |
運動系における情報の受容変換機構において最も重要な酵素の一と目されるCキナーゼの役割を分子生物学, 分子免疫学, 分子薬理学の3つのアプローチにより検討した. まずウサギ脳より精製したCキナーゼをもとに, 都立臨床研の鈴木部長らと共同でCキナーゼのCDNAを解析し, その全一次構造を解明した. またこのクローニングの課程でCキナーゼにはα, β, γ, δの4種の分子種が存在することを発見した. 次にこのCキナーゼの4種の遺伝子が, ハイドロキシアペタイトクロマトグラフィーにより分離されたI型, II型, III型のどのCキナーゼアイソザイムをコードするのかを明かにするため, それぞれのアイソザイムを特異的に認識するモノクロナール抗体, MC-1a, MC-2a, MC-3aを作製し得た. これらの抗体を用いて中枢神経系の免疫組織化学的検索を行ったところ, I型Cキナーゼは小脳のプルキニエ細胞, 海馬の錐体細胞等に, II型は小脳の顆粒細胞等に, III型は白質のオリゴデンドログリア細胞等に特に豊富に分布することが判明した. また脾臓や造血組織にはI型は存在せず, II型及びIII型のみが分布することが発見された. これらの結果とノーザンブロッティングによるCキナーゼのmRNAの臓器特異的発現の検討から, I型はδ, II型はα及びβ, III型はγによりコードされていると考えられた. また各抗体のエピトープ分析の結果, これらのモノクローナル抗体はいずれもCキナーゼの調節部位を認識していることが明かとなった.
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