研究概要 |
1.ATL由来細胞から産生されるIL-2R/Tac誘導因子ATL-derived factor(ADF)の精製蛋白N末より作製したオリゴプローブを用いてこの蛋白をコードするcDNAをクローニングした. 得られたcDNAから推定される蛋白の一次構造からこの蛋白が既知のリンホカイン, サイトカインとは異なったユニークな物質であることが明らかになった. 更にこの遺伝子のmRNAがHTLV-I陽性細胞で大量に発現しており, また正常末梢血リンパ球(PBL)でもマイトジェン, フォルボルエステル等の刺激に際して発現増強されることが明らかになった. 現在このcdDNAの組換蛋白を有核細胞, 大腸菌等の細胞に産生させてIL-2R/Tac誘導活性を始めとする各種の活性の検定を試みている. 2.NK様細胞株YTを免疫源として単独でPBLの増殖を増強する新しい抗体YTA-1を樹立した. YTA-1抗体はPBLの増殖誘導に際しIL-2と相加効果を示すほか, IL-2/IL-2リセプターコンプレックスのプロセシングを一過性に増強する. またPBL, 及びYT細胞において, Tac抗原を誘導する等, IL-2の一部の作用を代替する. この抗原はPBLのT細胞に発現するほか, 特にLGL/NK分画に著明に発現しているが, 静止期のB細胞には発現が認められない. 抗原が分子量7-8万の大きさを持つことから最近その重要性が注目されているIL-2R/p70との関連が考えられ, 現在抗原の精製, 及び蛋白のN末梢の一次構造の決定を試みている. 3.昨年度クローニングしたリンパ球の1gE Fcリセプター(FcεR2)とTac抗原が種々の細胞でCo-Expressしているため, この現象の意義を明らかにするために, FcεR2遺伝子をYT細胞に導入してモデル系を作製した. 現在種々のリンフォカインを用いて二つの抗原の制御機構を探索している.
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