研究概要 |
本年度は, 以下の3点について検討した. 1)血清中可溶型IL-2受容体(s-IL-2R)の測定:生体内でのIL-2受容体発現の鋭敏な指標の一つであるs-IL-2Rを, サンドイッチELISA法で測定した. ATL患者では, 正常人, 322±198u/ml(n=35)に対し, 61,370±80,600u/mlと著明な高値を示し, とくに, 急性型 , リンパ腫型で高値であった. この結果は, ATL患者体内で, 実際に腫瘍細胞がIL-2受容体を発現し, 一部が可溶型となって血中に流れていることを示している. また, s-IL-2R値は, 血清LOH値や治療効果などとよく相関して変動することから, 病勢をみる上での有用な指標の一つであろう. 沖縄権のある地域に住むHTLV-I抗体陽性健常者では, s-IL-2Rは, 394±212u/mlで(n=71), 同地域に住む対照と比べて, 統計学的に有意差は認められなかった. 2)ATL患者白血病細胞のIL-2, IL-4に対する増殖反応:8例のATL患者末梢血白血病細胞のIL-2, IL-4に対する増殖反応を3H-TdRの取り込みで調べたところ, 2例はIL-2にのみ反応, 2例はいずれとも反応せず, 残り4例は, 主にIL-4に対し増殖反応を示した. 非刺激リンパ球では, IL-4に対して増殖反応を示さないことから, ATL細胞の増殖にIL-4を介する経路が関与している可能性に注目する必要があると思われた. 3)IL-2受容体, p75のATL白血病細胞およびHTLV-I感染細胞株における発現:標識IL-2結合後, ケミカルクロスリンカーを作用させ, SDS-PAGEで解析したところ, p75の発現は認められたが, p55(Tac)よりも弱く, 結合試験で得られた, 大部分が低親和性IL-2受容体である結果と矛盾しなかった. IL-2受容体の親和性, シグナル伝達に重要と考えられるp75の構造と機能の解明, ATLにおける発現の検討が, 今後の重要な課題であろう.
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