研究概要 |
本研究は腫瘍抵抗性賦与に関与する腫瘍抗原の同定及びその認識過程の細胞性及び分子機構の解明, 更にはこれら知見に基づいた腫瘍免疫の人為的制御法の確立を目的としている. この観点から本年度は(1)可溶化腫瘍抗原の調製その分子免疫学的性状解析, (2)腫瘍特異的エフェクターT細胞各サブセツトの腫瘍抗原認識機構の解析, (3)マクロファージ活性化, 細胞障害機構解析の為のマクロファージハイブリドーマの樹立を目指し, 以下の実績を得た. (1)(a)Rous Surcoma Vines(RSV)誘発線維肉腫(CSAIM)の細胞膜画分より, SDS等の界面活性剤により腫瘍関連移植抗原(TATA)を含む可溶化画分を採取出来た. (b)この可溶化抗原は元のCSAIM腫瘍細胞はもとより, 同系のRSV誘発腫瘍細胞に対する免疫抗性を選択的に誘導する能力を有した. (c)SDSゲル濾過法, SDS-PAGE等の分析より, このTATAは分子量約60Kの蛋白であることが明らかになった. (2)抗腫瘍エフェクターT細胞の表面抗原の解析結果, L3T4+及びLyt-2+両サブセットのT細胞がエフェクターとして働くことがわかった. これら両サブセットT細胞は腫瘍抗原により活性化され, γ-IFNを産しマクロファージを活性化することが示された. 重要な知見は, これら両サブセットのT細胞の活性化は, 腫瘍細胞上の腫瘍抗原による直接的なものでなく, 腫瘍抗原が細胞表面からsheddingし, 宿主APCにより取り込まれその内部でprocessされた腫瘍抗原をAPC上で認識することにより行われていることである. (3)マウス腹腔浸出細胞とマクロファージ腫瘍株との細胞融合によりマクロファージハイブリドーマの樹立に成功した. このマクロファージハイブリドーマはin vitroでγ-IFNとLPSの刺激によりtumoncidalマクロファージとなることがわかり, マクロファージの活性化を解析出来る有力な材料を提供してくれることが明らかとなった.
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