研究分担者 |
川西 美知子 京都大学, 医学部, 助手 (60025616)
巽 英二 神戸大学, 医学部, 講師 (20192172)
小泉 民雄 神戸大学, 医学部附属病院, 医員
片上 祐子 神戸大学, 医学部附属病院, 医員
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研究概要 |
成人T細胞白血病(ATL)の病原体として, HTLV-Iウイルスが具体的にどのような機序で白血病化に関与するのか検討した. 1.正常T細胞のマイトジェンによる活性化とHTLV-I感染T細胞の表現形質について, 類似点と異なる点を比較検討し, 以下の知見を得た. (1)リン酸チロシンの活性化がPHA活性化T細胞のみでなく、HTLV-I感染細胞でも認められ、高親和性IL-2受容体β鎖のリン酸との関連性が注目される。(2)正常T細胞の活性化に伴い発現が亢進するインスリンD受容体、グルココルチコイド受容体、1.25(OH)_2D_3受容体活性が、HTLV-I感染T細胞でも認められ、ATL由来KH-2細胞で、特異cDNAを用いるNorthern blotting法で検出することが出来た。(3)HTLV-I感染T細胞の中、,HAM症候群由来T細胞株4系を用いて検討した結果、ステロイドホルモンによる増殖抑制がATL細胞よりも強く、より正常活性化T細胞に近い形質を示した。しかし、TPAに対する活性化は認められず、この面ではATL細胞に近い形質を示した。このことは、HAM由来T細胞の多角的な検討が重要であることを物語るものである。 (2)株化HTLV-I感染T細胞の増殖維持にはIL-2依存性を欠くものが大多数で, IL-2分泌能の欠如と対応してIL-2遺伝子の不活化が認められた. 一方, HTLV-I感染T細胞ではHTLV-I遺伝子pX領域のtat-I遺伝子によるトランス活性化でIL-2遺伝子が活性化されることが増殖の主因であると仮説がある. ATL由来KH-2細胞は活性型VD_3で増殖が抑制されるが, HTLV-I遺伝子mRNAの発現抑制はなく, IL-2遺伝子の発現は低いままで, IL-2RTac遺伝子, T細胞受容体遺伝子活性も不変であった. ところが, c-myc遺伝子活性は著しく抑制された, 発癌遺伝子の役割にも注目すべき知見と考えられた.
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