研究概要 |
ヒトT細胞株JURKATの膜標品の用いて, GTPγSおよびフッ化アルミニウムによるポリホスホイノシチド・ホスホリパーゼC(PLC)の活性化を証明した. この結果は, GTP結合タンパク質(Gタンパク質)に共役したPLCがJURKAT細胞に存在することを示している. しかし, 抗CD3抗体刺激によるPLCの活性化を膜標品を用いて再現することには成功しなかった. そこで, 緑のう菌サイトトキシンを用いて細胞を処理することにより, ヌクレオチドに対し透過性にしたJURKAT細胞を調整し, これを用いて, 抗CD3抗体刺激によるT細胞受容体(TcR)/CD3複合体を介するPLCの活性化を検討した. 抗CD3抗体であるOKT3によるPLCの活性化は, いかなる濃度のGTPγSによっても活性化されることがなく, 10〜100μMのGTPγSにより強く抑制された. この結果は, TcR/CD3複合体を介するPLCの活性化にGタンパク質が関与しているとした場合, 説明困難である. OKT3によるPLCの活性化は, NaFによっても抑制され, この抑制作用はAlcl_3によって増強された. 即ち, フッ化アルミニウムが, OKT3によるPLCの活性化を抑制する. また, Gタンパク質の拮抗阻害剤であるGDPβSは, OKT3によるPLCの活性化を全く阻害しなかった. これらの結果は, TcR/CD3複合体を介するPLCの活性化には, Gタンパク質が関与していない事を強く示唆している. JURKAT細胞においては, GTPγSやフッ化アルミニウムでGタンパク質を活性化すると, TcR/CD3複合体を介するPLCの活性化が抑制されることから, この細胞には, PLC活性を調節する抑制性のGタンパク質が存在すると推定される. 現在, TcR/CD3複合体を介するPLC活性化に働くトランスジュサータンパク質の同定および抑制性Gタンパク質の同定を試みている.
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