研究概要 |
1.分裂酵母のmei2遺伝子物産は, その減数分裂開始反応に枢要な正の因子である. この産物の実体とそれが与える生化学反応, またその遺伝子発現の制御を解明することは本研究課題の大きな目標のひとつであり, この点で次の研究成果を得た. (1)先に決定した塩基配列から推定されるmei2遺伝子産物(計750アミノ酸)と大腸菌phos遺伝子産物との融合タンパク質を遺伝子工学的手法により作製した. 次に融合タンパク質を用いて兎を免疫し, 抗血清を得た. 得られた血清は, ウエスタンブロッティング法による解析で, 予想に近い分子量約8万の分裂酵母のタンパク質と反応した. このタンパク質はmei2遺伝子を破壊した株では消失しており, mei2遺伝子産物そのものと考えられる. 既知のタンパク質とのコンピュータによる相同性検索では, 残念ながらmei2遺伝子産物と似たものは見出されない. (2)mei2遺伝子の発現制御にCAMPが関与している証拠を得た. mei2遺伝子の転写が窒素源の飢餓によって誘導されることは先に示したが, 培地へのCAMPの添加はこの誘導を全く不能にする. 同じ現象は窒素源飢餓で誘導される他の幾つかの生活環制御遺伝子についても観察された. Pat1変更により制御がはずされた減数分裂もCAMP添加で進行しなくなるが, この主因がCAMPによるmei2の転写阻害であることを, 構成的に発現するmei2遺伝子を用いて証明した. 2.(1)接合に必須で, 減数分裂開始効率にも影響を及ぼす分裂酵母ras1遺伝子について染色体地図上の位置を決めた. またras1と同一表現型を与える遺伝子の解析を進め, 遺伝学的に4グループに分けられることを示した. (2)クローン化した分裂酵母カルモデュリン遺伝子(cam1)を試験管内で操作し, 分裂酵母に戻すことで, カルモデュリンの第4番目のCa^<2+>結合ドメインとその近傍に変異をもつ株を作製した. そのなかに生活環に影響する予備的効果を与えたものがあり, さらに詳しい解析を進めている.
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