研究概要 |
マイコプラズマは既知の自己増殖生物としては最小のゲノムサイズを示し, 細胞の自己増殖装置として完結した最小の単位となりうる極めて有用な研究材料といえる. 他方, このゲノムのGC含量は25%と既知の生物として最小値を示し, 塩基組成は極端にAT側に偏っている. このため大腸菌などとは異なった遺伝情報システムを有することが期待される. 従って細胞複製装置全般における可塑性, 進化を考える上で有用な研究対象といえる. 以上の2つの観点からこの細菌は「細胞複製」の研究に極めて特異な情報を提供できる材料であると思われ, その解析の遺伝学的基盤を確立するために以下のゲノム構造の解析を行った. (1)パルスフィールド電気泳動法を用いた染色体の解析:細胞から染色体DNAを調整し, パルスフィールド電気泳動法を用いて解析した. G+C含量の低いことからGC対のみからなる6塩基対認識配列を持つ制限酵素(Smal,Nael,Apal,Bbel), 及び8塩基対認識酵素Notlを用いて調べたところ, これらは数10kbから数100kbの断片を生じることからこの染色体DNAのレアーカッターとなることがわかった. Notl, 認識部位は染色体ゲノム中1カ所存在し, これを直線化する. このときのDNAサイズからゲノムの実際の長さは従来の予測値(800kb)よりやや大きく約1100kbであることが判明した. Smal.Nael,Apal,及びBbelは染色体DNAをそれぞれ数本に切断することからこれらの組み合せにより染色体DNAを数十kbp毎に分割することができると思われる. 現在これらの酵素地図を作成中である. (2)ジーンバンクのクローンの制限酵素地図を重ね合わせた詳細な全体の制限酵素地図の作成を試みている. 500余のクローンの制限酵素地図を順次作成中であるが残念ながらまだ全体像を描くには至っていない.
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