研究概要 |
dnakdnaJ.オペロンは熱ショックオペロンの一つである. 塩基配列の決定から, dnaJ遺伝子産物は395アミノ酸残基からなる蛋白質であることが既に明らかにされている. dnaJ変異には表現型の違う二つのタイプのものが知られている. ラムダファージDNA合成のみが影響を受けるもの(dnaJ270変異等)と, ラムダファージDNA複製と菌の生育が共に影響をうけるもの(dnaJ705変異等)である. これらの変異がどのようなものかを明らかにし, 蛋白質のドメインと機能の関係を明らかにする目的で, 変異遺伝子のクローニングを計画した. 予備実験としてdnaJ遺伝子のほぼ全域を含む900塩基対からなるHindII断片をプローブとして, 各変異株全ゲノムDNAをHindIIIで分解したものにつき, サザーンハイブリダイゼイションを行なった. その結果dnaJ705変異をもちdnaK遺伝子にも変異をもつK7052株では, dnaJ遺伝子が欠失していることが判明した. 周辺部位について同様の検討をしたところ, 変異株は8kbの欠失を有し, dnaKdnaJ両遺伝子を完全に欠失していることが明らかになった. dnaK遺伝子については既にPeakらによって, 欠失変異株と同定から, この遺伝子が低温での増殖には不用であることを示唆している. しかし, P1ファージでの形質導入で他株にdnaJ変異を移す試みは成功していない. K7052株にはdna705, dnaK706変異とともに, 欠損を一部相補するサプレッサー変異が生じている可能性は否定できない.
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