研究分担者 |
福井 作蔵 広島大学, 工学部, 教授 (60013299)
上領 達之 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50025649)
藤田 泰太郎 福山大学, 工学部, 助教授 (40115506)
堀内 忠郎 九州大学, 薬学部, 教授 (10037567)
品川 日出夫 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (40029799)
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研究概要 |
今年度の研究の中で特筆すべきこととしては, 遺伝子転写の正の調節機構に関するものがある. 転写調節については, 従来大腸菌のラクトース代謝系のように, 転写開始を抑制するレプレッサーに誘導物質が結合することにより, 抑制が解除されて転写が進行するという負の調節の図式が一般化している. しかし最近では, 動物の遺伝子をはじめ, 微生物の遺伝子においても, 転写を積極的に促進するアクチベーター蛋白の存在が注目を集めはじめている. 本研究ではアクチベーター蛋白の代表的なものとして, 大腸菌のリン酸代謝系におけるPhoB蛋白, シュードモナスの芳香族化合物分解系のXyIR蛋白, 枯草菌の芽胞形成にあずかるSpoOA蛋白についての研究が行われた. いずれの蛋白質もその遺伝子のDNA塩基配列から一次構造が推定され、相互に比較が行われたところ、これらはよく似たドメイン構造をもつことがわかった。しかし、PhoB蛋白、XyIR蛋白については、それらが作用するDNA領域の解析が進み、両配列を比較すると、両者は全く異っていた。さらに、無細胞転写系による解析を含む種々の系統の結果、PDhoB蛋白は、従来から知られているシグマ因子(α^70)をもってRNAポリメラ-ゼの作用を助けることがわかった。これに対し、XyIR蛋白は、変異株を宿主とする解析から、通常のRNAポDリメラ-ゼではなく、α^<60>(Nfra蛋白)をもつ別種のRNAポリメラ-ゼの作用を助けるものであることが明らかになった。 このように, 今年度の本研究においては, 細菌の正の転写調節の分子機構に関して新しい知見をうることができた. これらの正の調節機構を組み込んだ発現ベクターを作成すると, 従来の方法では困難であった場合でも, 遺伝子の効率的発現が可能となると思われる. そのような将来の実用化の方向に対しても, 上記の基礎的知見は重要であると考える.
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