研究概要 |
本研究では, 基礎研究上や応用上, 興味深い酵母Camdida maltosaを対象とし, 宿主-ベクター系を開発し, その系を利用して炭素源を変えた時に誘導される遺伝子やそのプロモーターを単離し, 遺伝生化学的に解析すると共に, 物質変換系としての利用の道を拓くことを目的とする. 初年(昭和62年)度には, (i)本酵母の宿主-ベクター系を開発し, より利用しやすい系を完成させる. (ii)炭素源を変えた時に"on""off"される一群の遺伝子のプロモーターを単離するためのプロモータープローブベクターを開発する, の2点で成果を挙げることができた. (i)私はすでにC.maltosaで複製起点と成り得るARS領域を染色体DNAより単離している. この領域を用いヒスチジン要求変異株を相補するDNA断片を単離することができた. ARS領域とこの領域を用い, C.maltosaのヒスチジン要求株を宿主とする種々のベクターを構築した. これらベクターは今後, 遺伝子やプロモーターのセルフクローニングのために有用である. (ii)炭素源を変えた時に発現する遺伝子のプロモーター群の単離のために, LEU2遺伝子を利用してプロモータープローブベクターを構築した. このベクターは, そのままではC.maltosaのロイシン要求生を相補することはできないが, ある炭素源を含む培地で培養した時に"on"になるプロモーターがLEU2遺伝子の上流に挿入された時には, ロイシン要求性を相補できる構造になっている. 今後, このベクターを利用して炭素源により"on""off"されるプロモーターを単離し, 非水溶生物質の転換に関与する異種DNAの発現系の構築を行う.
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