研究概要 |
ミトコンドリア電子伝達系における電子伝達とエネルギー転換の機構を解明するために, その生理機構を支える構造の解明と同時に病態における構造異常と機能異常との関連を追究し, 下記の諸点につき新知見を得た. 小澤らはヒトのチトクロムc1のcDNAを単離し, その前駆体の全構造を明らかにしたさらに, その遺伝子が第8染色体の上にあることを確定し, その遺伝子の上流域の解析をすすめている. 一方, 種々の脳筋症の病型における電子伝達系酵素サブユニットの欠損の検索を行い, ミトコンドリアDNA自身の変異によってサブユニット欠損が生じている可能性を示唆した. 多口らは, 電子伝達系酵素欠損症の病態を明らかにするために, 少量の培養線維芽細胞を用いて乳酸/ピリビン酸比および電子伝達系酵素活性を測定する方法開発した, これを用いて110例の患者の中から複合体I欠損症7例 複合体IV欠損症3例を見出し, 本法が酵素欠損症のスクリーニング法として有用であることを示した. 松原らは遺伝子操作技術を駆使して酵母抗のチトクコムCの構造と機能の解析を行った. すなわち, DNA導入により作製した2種のC1遺伝子欠損株を分析した結果, チトクロムC1のC末端側の疏水性領域は内膜への局在化には必要ないが, 複合体IIIのアッセンブリーに必須であることを明らかにした. 折井らは酸化還元駆動性プロトンポンプの作用機構を明らかにするために, チトクロム酸化酵素と酵素の反応をflow-flash法によってまたプロドンの動きをPH指示薬によって同時測定を行った. 解析の結果, 酵素の分子内電子移動の過程においてプロトンが局折的に移動することを示唆する知見が見られた. 佐藤らはミトコンドリア脳筋症における電子伝達系酵素異常をプロテインA-コロイドゴールド法により免疫電子顕微鏡的検討し, 異常ミトコンドリア内の結晶様封入体では電子伝達系酵素が存在しないことをはじめて明らかにした.
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