研究概要 |
増殖に0.5M食塩を必要とする海洋細菌Vibrio alginolyticusの呼吸鎖にはNa^+排出活性と直接共役する独特なNa^+輸送性NADH-キノン・リダクターゼ複合体が存在し, この部位の電子伝達に伴って生ずる「Na^+-駆動力」が海洋細菌においてはエネルギー形成の中心的役割を果している. すでに本複合体によるユビキノンの還元は, セミキノンを経てキノールを生成する2段階の反応で進み, 後半の反応がNa^+排出と共役することを明らかにしている. 本複合体はα, β, γの3種きサブユニットから成り, FADとFMNをそれぞれ1分子ずつ含むフラポ蛋白であることもわかって来たので, 今回はさらに精製を進め, 再構成能を持つサブユニットの分離を試み, サブユニット構成と機能との関連を追求した. 各サブユニットの組成及びその存在比の異なる種々の分面を用いてNADH dehydro genase(=DHase)及びNADH-キノン・リダックターゼ(=ORase)活性を測定した結果, βを含むすべての分画はFAD量に比例したDHase活性を示した. 一方, ORase活性はα, β, γの3種のサブユニットを各々等量含む分画において最高活性を示し, 3種のうちのいずれのサブユニットが少ない場合にもQR活性は低かった. またα, β, βγ分画を用いてQR活性すなわちキノール生成能の再構成実験を行ったところ, 3種のサブユニットが等量存在する時最も強く活性は再構成された. 従って本複合体の分子量が, 低角度レーザー光散乱法により測定した結果役26万であることと考えあわせ, NADHキノン・リタクターゼの活性型構造はα, β, γの各サブユニット2分子ずつから成ることが, 機能の面からも明らかになった. フラボ蛋白であるα(FMN)とβ(FAD)に比べ, γサブユニットは単離が難かしくいまだ再現性のよい精製法は確立していないが, βとβγとの比較から, γにはフラビンは存在しないが1分子のユビキノンを結合した蛋白と考えられた.
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