研究概要 |
胃壁細胞による胃酸分泌には, 分泌刺激によってtubulovesideから管腔側細胞膜へと組込まれるところのH^+, K^+ポンプと, 何らかのメカニズムで活性化される各種イオンチャネルが関与するものと考えられる. 管腔側細胞膜上で直接単一チャネル活動を観察するために, 我々が開発した培養ラット壁細胞系にパッチクランプ法を適用した. 分泌刺激前の管腔側細胞膜上においては, 25-40pSの単一チャネルコンダクタンスのNa^+, K^+, Cs^+をほぼ同等に透過させるところの非選択性カチオンチャネルの存在が見いだされた. このチャネルは細胞内Ca^<24>に対する依存性は示さなかった. 酸分泌刺激後には新たに15-25pSの単一チャネルコンダクタンスを持つところのCl^-チャネルの発現が同定された. 本チャネルのCl^-イオン選択性は高く, その活性はCl^-チャネル阻止剤SITSで抑制された. H^+, K^+-ATPase活性化による酸分泌をアクリジンオレンジ蛍光色素法によってモニターしたところ, 分泌レセプター刺激によって増大し, オメプラゾールによって抑制されることが明らかとなった. 細胞外の高濃度K^+はこれを更に促進し, キニンによっては強い抑制を受けた. またSITSによっても酸分泌能は著しい抑制を受けた. 以上の結果から, 管腔側細胞膜Cl^-チャネルが, H^+, K^+ポンプ活性と協同関係を機能的にもつことが結論された. Cl^-チャネル活性は酸分泌刺激後にはじめて出現するところから, このとき同時に管腔側膜に動員されるH^+, K^+ポンプとの分子的同一性が疑われた. しかし, オメプラゾール投与によってCl^-チャネル活性にはなんらの影響ももたらされないので, Cl^-チャネル分子とH^+, K^+ポンプ分子は機能的にみて部位を異にすることが結論された.
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