研究概要 |
筋小胞体カルシウムポンプを巨大ベシクルに組み込んだ再構成膜系を構築し,ポンプ活性を電気生理学的に測定して, イオンポンプにおけるエネルギー変換機構の熱力学的研究に対する再構成系の有用性を評価することを目的とした. 1.ポンプ活性の測定は膜を横切る電流として測定するので, まず, カルシウムポンプの起電性の確認を, ポンプが活動した時のベシクル内容積の変化の測定により行った. ストップト・フロー-ESR装置及びスピンラベル剤TEMPONEと常磁性金属イオンとの組合せを用いて, TEMPONEのベシクル内外への分配を測定することにより, 筋小胞体ベシクル内容積を求めた. グルコン酸カリウム溶液中, 内容積は約10%減少した. ポンプが起電性であるならば, 電荷を補償するために移動しうるイオンは, この条件下ではK^+イオンのみである. Ca^<2+>が1個入るとK^+が2個出て行くものとして, ベシクル内容積変化を見積ると, 実験結果とよく一致した. 2.巨大ベシクルへの再構成-筋小胞体及びバクテリオロドプシンをリン脂質と共に可容化・透析法又は超音波処理法により再構成し, 凍結・融解法により巨大化させた系について, 小胞内容積の測定とイオン取込み活性の測定を行った. イオンに対する障壁能をもった巨大ベシクルが生成していることが示された. 3.生体膜小胞を, 外在性脂質を加えることなく, そのまゝ融合させる技術の開発-生体膜小胞をプロテアーゼ処理した後に凍結・融解処理を施して巨大ベシクル(単層のように見える)が得られることが見出された. この方法を筋小胞体に適用して, 直径10μm程度の巨大化筋小胞体ベシクルの生成を光学顕微鏡下に認めた. 外部Ca^<2+>電極による測定から, この標品はCa^<2+>取り込み活性を有することも確認した. 今後は微小Ca^<2+>電極を用いて, 巨大ベシクル内部のCa^<2+>イオン濃度を直接測定する試みを行ない, 所期の目的を達する見込みである.
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