研究概要 |
1.ラットリボソーム蛋白遺伝子のクローニング すでに分離, 解析を終えているcDNAクローンをプローブとして, ラットリボソーム蛋白S11, S17, S26, L27, L35aなどの遺伝子クローニングを行った. 各々の蛋白について10種類程度以上の相互に独立なクローンを分離することができたが, この結果はすでにSouthern blot分析で予想されたリボソーム蛋白遺伝子の多重遺伝子構成を実証するものである. しかし, 得られたクローンの大部分は, cDNAと比較して種々の程度の塩基置換, 挿入, 欠失などを示すとともに, 介在配列を持たず, いわゆるprocessed pseudogeneであると考えられた. かくして, processed pseudogeneによる多重遺伝子構成がラットのリボソーム蛋白遺伝子の一般的な構成であることが明らかになったが, 現在, この中から実際に発現している本来の遺伝子のクローンの選別を行っている. 2.生物種間のリボソーム蛋白遺伝子構造の比較 細菌や酵母は勿論, ショウジョウバエのような多細胞生物で蛋白遺伝子単一であり, リボソーム蛋白の多重遺伝子構成は, 進化上比較的新しい時期現れたもののようである. そこで, ラットのL35acDNAをプローブして, カエル, カメ, 鶏, マウス, モルモット, 家兎, 人などの遺伝子構成Southern blot法によって比較した. 鶏以下ではいずれも単一のバンドを示のに対して, 哺乳類では全て10本以上のバンドから成る複雑なパターンをし 多重遺伝子構造が哺乳類に特徴的なものであることが示された. このようにprocessed pseudogeneを組み込んで, 複雑な遺伝子構造を作っ行く機構を哺乳類が獲得したとすれば, これが進化を加速した可能性も考えれ今後の研究課題として興味深いものと思われる.
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