研究概要 |
哺乳類動物の主要組織適合性抗原遺伝子(MHC)は著しい多型性を示し, 免疫担当細胞による抗原(非自己)の認識に重要な役割を果たしていることが知られている. 一方, 脊髄動物の同種移植片拒絶のパターンは, 急性の拒絶を示す哺乳類, 鳥類, 無尾両生類, 軟骨魚類のグループと, 慢性の拒絶を示す爬虫類, 有尾両生類, 軟骨魚類, 無顎類のグループとに2分され, MHCの起源に関する興味深い問題を提起している. 本研究は, 近年わが国で確立されたメダカの近交系を用いて軟骨魚類のMHCを探索, 分析し, 脊髄動物におけるMHCの起源と進化について考察することを目的として開始された. 本年度は, まず始めにマウスのMHC遺伝子の1つであるEα遺伝子のcDNAプローブを用いて, これと相同のメダカの遺伝子の探索を試みた. しかし, 最もマイルドなハイブリダイゼーションの条件下でも, はっきりとしたバンドの存在は認められず, こうした直接的な方法でEα相当の遺伝子を捜すことが困難であることが示された. そこで, 今後の計画として第一に, マウスのE分子を発現しない系統にメダカのリンパ球を免疫し, その抗血清がE分子を発現するマウスのリンパ球と反応するかどうか調べることにより, 間接的ではあるが, 血清学的手法によりメダカのE分子相当の抗原の有無を確認したい. 第二に, メダカのリンパ球に対するモノクローナル抗体をマウスを使って作成し, その中から近交系間で反応に違いの見られる抗体を捜し出すことを試みた. モノクローナル抗体が認識する抗原分子の中からMHCの候補を同定した.
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