研究概要 |
C-fos遺伝子転写は, C-キナーゼ活性化により誘導される. この誘導の際のC-fos遺伝子構造について検討を加えた. 活性クロマチンの指標の一つであるヌクレアーゼ感受性に関しては, C-fos遺伝子5′上流に4ヵ所のDNaseI感受性部位が検出された. この部位および感受性は, 誘導の前後で変化しなかった. U93Z細胞をTPAで処理するとC-fos転写誘導が起こるが, この誘導はトポイソトラーゼ阻害剤の1ホビオシン, カンプトテシンにより抑制された. 従って, C-fos誘導にはトポイソメラーゼによるDNAのコンホメーション変化が必須と考えられた. そこで, 細胞内C-fos遺伝子上のトポイソメラーゼ作用点を解折した. この作用点は, 細胞から抽出した高分子DNAを制限酵素で切断し, アルカリ性アガローズ電気泳動後サザンプロットして検出したその結果, C-fos遺伝子5′上流に3ヵ所のトポイソメラーゼによるDNA鎖切断が見られ, このうち2ヵ所はスクレアーゼ感受性部位と一致したが, C-fos誘導に伴う変化は見られなかった. 以上の結果から, C-fos遺伝子は誘導前から活性化されたクロマチン構造をとり, トポイソメラーゼにより動的変化を受けていると考えられた. 従って, 発現誘導は遺伝子の5′上流に作用する転写因子により制御されることが主な調節機構となっいると考えられた. この点をクロランフェニコールアセチナルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を用いて検討した. ヒトC-fos遺伝子の転写プロモーターを持つCAT遺伝子をL-細胞に導入し, C-fosプロモーターの異なった部分のDNAを同時に導入すると, -200付近のDNAによりCAT活性が上昇した. この結果はC-fos転写プロモーターには抑制的に動く因子が結合し, この因子の不活化が誘導の主な要因であることを示唆している.
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