研究概要 |
解析のモデル系としてここでは分子遺伝子学を展開できる酵母(S.cerevisiae)を取り上げ, 転写制御因子の検索を行った. 大腸菌の転写制御因子の遺伝子をプローブとして, 酵母染色体からそれらのホモグロの検索を行った結果, σ^<70>遺伝子(rpoD)と強くハイブリダイズするHindIII断片を6種類(A-F)検出した. D(1.8kb), F(0.8kb)のフラグメントをクローニングし塩基配列分析を行った結果, rpoD上の特定領域がD及F間とで塩基配列・アミノ酸配列上高い相同性を持つことが分かった. この部分はσ^<70>タンパク質上で酸性アミノ酸のクラスターを形成する. RNA分析から, 3000(F)と1700(D)塩基鎖長のRNAが検出された. Fに関しては更に単鎖DNAのサザーン分析により, 酸性アミノ酸をコードする側がsense鎖としてRNAに転写されていることが分かった. しかし遺伝子破壊実験の結果はこれらのDF領域は酵母の生育のものには必須な領域ではないことを示した. これら結果からDとE上のσ^<70>との相同領域はRNAに転写されるが, 酵母の生育そのものには必須な遺伝子をコードしていないと考えられる. ここで行った検索方法は的中すれば大きな飛躍が期待される反面, リスクも大きい, しかし最近明らかになってきているように, 大腸菌と真核細胞RNAポリメラーゼ間で保存されているDNA及びアミノ酸配列上の驚くほどの高い相同性はこの方法の可能性を依然として示唆する. 今回得られた結果は必ずしも今目的とするσ因子がDE上にコードされてはいないことを結論するものではない, しかしリスクを回避して研究を進展するための意味から, 現在我々は更に酵母のランダムな温度感受性変異株のコレクションを作製し, その中から熱ショック応答に欠損を示す変異株のスクリーニングを開始した. これは酵母の熱ショックσ因子変異株の分離を目的とする.
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