研究概要 |
緑色植物では, 葉緑体のチラコイド膜上にある光化学系I及びIIの2つの色素タンパク質複合体が光合成の初期反応である光化学反応を担っている. 本研究では, 光化学素Iを構成するサブユニットタンパク質の遺伝子構造とDNA塩基配列とを明らかにし, そこから光化学素I複合体の構造・機能及び生合成機構に関する知見を得ることを目的としている. 本年度の研究では, 光化学素Iタンパク質の単離・精製とそれらタンパク質のN末端アミノ酸配列の決定を行った. これらのアミノ酸配列は, 今後光化学素IのcDNAクローンを単離する際のプローグ作成に用いられる. 光化学素I複合体は, タバコ(Nicotiana tabacum var,Bright Yellow 4)の成葉から, 界面活性剤による葉緑体膜の可溶化, DEAEセルロースカラムクロマトグラフィー, ショ糖質度勾配遠心法等を用いて精製した. 得られた光化学系I標品は, コアサブユニットとして少なくとも11種のタンパク質又系Iに結合しているアンテナ複合体LHCIの成分としては少なくとも6種のタンパク質成分を含んでいた. これらのタンパク質成分のうちコアサブユニットの4.5.9.10.11の5成分, LHCIの小サブユニット1種, 計6成分のN末端アミノ酸配列を, 気相プロテインシーケンサーABIモデル470Aによってそれぞれ10から30残基決定した. これらのアミノ酸配列を, マイクロコンピュータNECPC98XLとGENETYXprogram(ソフトウェア開発)を用いて, タバコ葉緑体DNAの全塩基配列のデータベースと比較したところ, コアサブユニットの10以外は全て核DNAにコードされているタンパク質であると結論された. 又サブユニット10はpsacとして知られている遺伝子の産物であることが明らかとなった. 今回得られた系Iサブユニットの部分アミノ酸配列は, 今後遺伝子解析を進めていく上での重要な手掛りとなる.
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