研究概要 |
ウシ網膜の全mRNAより, λgt11発現ベクターを用いcDNAライブラリーを作成し, 抗PDE多クローン抗体を用いてスクリーニングを行った. 本抗体は, ウエスタンブロッティング法によりPDEのα(88KD), β(84KD)およびγ(11KD)サブユニットに特異的に反応することを確認した. スクリーニングの結果2個のクローンが得られ, ハイブリッドセレクションにより両者共γサブユニットと同分子量のタンパク質をコードしていることが判明した. 抗体をプローブとして得られたこれらのクローンは, 非常に短いが以下の特徴が認められた. すなわち, DNAの塩基の中でGとAの含量が非常に高いこと. ならびに, 9個のアミノ酸の繰り返し配列の存在と高いグルタミン酸の含量である. 次に, 本タンパク質の全一次構造の決定のため, 上記のクローンをプローブとして長いcDNAクローンの単離を試みた. その結果, ポリA末端を含む全長約2.2Kbを構成する2個のオーバーラップするクローンが得られた. 現在までに得られたアミノ酸配列と既知のタンパク質とのホモロジーを調べたところ, ウシ, ブタ, マウスのニューロフィラメント, およびその機能は全く不明であるがウシ脳より得られたglutamic acid-rich proteinと50%以上の一致を示す配列が存在することが判明した. ウシ網膜かん体外節のPDEγサブユニットは, 既にOvchinnikov,Yu.A.らのグループにより報告されているが(FEBS Letters 204, 288-292, 1986), 本研究で得られたクローンのDNAおよびアミノ酸配列は, 彼らのものとは全く異なっていた. 以上の結果より, PDEタンパク質のヘテロ性が考えられるが, ウシ網膜より得られたほ本タンパク質が, 他の神経組織に存在するニューロフィラメントやglutamic acid-rich proteinと相同性を示すことから, 本タンパクが光受容反応に重要な機能を有する我々がまだ知らない因子でるあ可能性も考えられ, 今後この点について検討を進めたい.
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