研究概要 |
1.光化学系I反応中心に存在する10分子のchl-aの性質およびその立体的配置について以下の結果を得た. (1)P700およびP700から最初に電子を受け取るAo(chl-a-690)は, ともに膜面に平行に配向している. また, P700^+も膜面に平行な配向性を示した. (2)chl-a-682は, P700の最も近くに位置し, そのポルフィリン環はP700と平行に配向している. (3)chl-a-670はAoの極く近くに位置しており, 膜面に垂直に配向している. monomerとして2分子存在し, P700にAoを介してその励起エネルギーを伝達する. (4)chl-a-675はP700の近くに位置するが, P700に対してそのポルフィリン環が直交しているため, P700への励起エネルギー伝達効率はよくない. (5)反応中心近辺に残っているchl-bはA_2(X)の近くに位置し, 膜面に垂直に配向している. 2.光化学系Iの電子伝達成分の性質について以下の知見を得た. (1)vitamin K_1とA_1との関係:vitamin K_1をP700当り2, 1, 0個含む系I標品を用いてその電子伝達効率を10Kでの閃光照射によるP^+, center A^-, B^-の蓄積効率から推定した. VK_1=0のときにも安定な電荷分離がおきるが, その効率はVK_1=1 or 2のときに比べて約1/500であった. (2)A_0の性質:光化学系Iの初期電子受容体Aoは690, 430nmに吸収極大をもつ. 還元されるとその吸収がなくなり700nm以上の領域に吸収が現れる. 110Kでは各々の吸収帯ピーク位置は変化せず, 各吸収帯がシャープになった. これからAoはchl-aのモノマーであると推定された. (3)Ao^-/P700^+の電荷再結合に伴うケイ光:A_1(VK_1)のない系I標品のピコ秒-ナノ秒領域でのケイ光スペクトル変化を90Kで測定した. 系Iのvariable fluorescence(F700)の寿命はAo^-からP^+への電子逆行速度(t_<1/2>=約60 nsec)に一致し, したがってこれはAo^-/700^+の電荷再結合に伴なって発生するいわゆる遅延ケイ光であると推定された.
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