研究概要 |
1.シロイヌナズナ(Arabidopsis)の種子をエチルメタンスルフォネートで処理し, その種子(M1)の次代(M2)の中から種々の突然変異体(1)花の発生, 形態に異常を示すもの(2)葉や茎に形態の異常を示すもの(3)根の重力屈性反応に異常を示すもの(4)各種薬剤に耐性を持つものなどを分離した. このうち, (1)と(3)について, 外部形態など表現型の解析と遺伝解析を行った. 花の形態形成異常の変異体(約160株)の中には, 花弁, がく, おしべ等の器官原基が欠失しているもの, 原基の数が増減するもの, 原器が成長して成熟した器官になる途中の段階で構造的異常が生じるもの等に加えて, 本来がくになるべき原基がめしべに分化するなどのホメオティック変異を示すものが多数得られた. これらの変異体は, そのほとんどが, 1個の単純劣性突然変異を核ゲノム上に持っていることが明らかになった. また根の重力屈性反応異常を示す変異体10株は, 3グループに分別分類された. 少なくとも3個の遺伝子が, 根の重力屈性を支配していると考えられる. 2.-λファージベクターを用いてシロイヌナズナのジェノミックライブラリーを製作し, ラットのカルモジュリン遺伝子をプローブとして, シロイヌナズナのカルモジュリン遺伝子をクローニングした. 現在2個の異なる遺伝子を同定して塩基配列を決定している. 3.Tiプラスミドベクターを用いてシロイヌナズナの葉片または茎の一部の細胞にトランスフォーメイションを行い, 形質転換細胞を得る系を作っている. 得られた形質転換細胞からトランスジェニック植物体を再生させることができる. この系を用いて, 上に述べたシロイヌナズナの花の形態形成や根の重力屈性反応に異常を示す突然変異体から変異遺伝子を同定分離することを試みている.
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