研究概要 |
人類をはじめ, すべての動物の存在の最も具体的かつ最終的表現である運動の発現にかかわる要素である. 中枢神経, 抹消神経, 筋肉よりなる運動系について, 分子レベルの研究により, 運動系の発達過程, 運動系のエネルギー生産系の調節, 運動系の代謝過程の遺伝子レベルでの調節, 運動細胞の変性・老化・修復の機構, 運動系細胞間の物質レベルでの情報伝達, などについて, 集約的な研究を行う重点研究を推進するため, 次の研究項目について, 研究を行なった. (1)運動系の発達とその異常の研究として, 脳の発生から小児の運動機能の発達に至までの機構を, 病理, 生化学, 分子遺伝学の側面から解析し結合すると同時に, 特に運動発達の異常を細胞レベル, 分子レベルで解明する. (2)運動系における情報伝達の研究として, 情報伝達の原理とその障害の機構を, 脳のニューロン回路網と抹消運動神経系および筋肉のシナプスについて, シナプス前部伝達物質, シナプス後部の受容と情報変換機構を分子細胞レベより解明する. (3)運動系の分子・遺伝生物学的アプローチの研究として, ミトコンドリアの電子伝達系のエネルギー代謝機構とその異常, 運動系細胞の固有な蛋白とその蛋白合成にかかわるDNAのモノクローナル抗体法をDNAシークエンスによる解明, 運動系に異常をもつ遺伝性疾患のDNA上における異常などを研究する. (4)運動系の変性と修復の成立過程の研究として, 変性と修復の過程を内因, 外因, 疫学的手法で追求し変性の結果生ずる異常を薬理学的手段と神経系の適応性とを用いて修復する基礎過程の分子レベルでの解析を行う. (5)運動系における制御機構の研究として, 運動系の統合中枢である錐対外路系等の機構を形態学, 薬理学, 生理学的手法でシナプスレベルで解明する. 以上の項目の研究を進める為に班会議2回, ワークショップ1回, シンポジウム1回を開催し, 研究の最新の情報を集約し, 重点研究を推進した.
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